「動画もAIで作れるらしい」。そう聞いて、自社の動画制作を丸ごと任せられないかと考える担当者が増えています。結論から言うと、その期待は半分正しく、半分は危ういです。
AI動画制作は、動画制作をすべて置き換えるものではありません。一部の工程を速く・安く仕上げる手段として使うのが現実的です。ナレーションの生成や字幕、抽象的なイメージ映像づくりなら、すでに実務に耐えます。一方で、自社の商品を正確に見せる映像や、社員が登場する映像は、今も撮影が要ります。
では、どの工程を任せ、どこは人がやるべきなのか。この記事で、その線引きを用途別に整理します。
AI動画制作とは何を指すのか?
AI動画制作とは、生成AIを使って動画の一部または全部を自動でつくる制作方法を指します。「生成AI」とは、指示文(プロンプト)をもとに新しい画像・音声・文章をつくり出すAIのことです。
前提として、企業が動画に投じる予算そのものは増え続けています。国内の動画制作サービス市場は2024年度に4,238億円(前年度比106.2%、事業者売上高ベース)、2027年度には5,400億円まで拡大する見通しです(出典: 矢野経済研究所「国内動画制作サービス市場に関する調査(2025年)」調査期間2025年7〜9月)。AIの登場で制作費が単純に消えるのではなく、限られた予算をどの工程に配分するかが論点になっている、と捉えるのが実態に近いといえます。
実務で使われている範囲は、おおむね次の5つに分かれます。
- 映像そのものの生成:指示文から短い映像クリップをつくる、または静止画に動きをつける
- ナレーション音声の生成:原稿から人の声に近い読み上げ音声をつくる
- 字幕・翻訳の自動生成:話した内容を文字起こしし、多言語の字幕に変換する
- 構成案・台本づくりの支援:企画の叩き台や構成の候補を出す
- 編集作業の効率化:不要な部分の自動カット、背景の切り抜きなど
重要なのは、これらが「動画制作」というひとつの作業ではなく、工程ごとに使えるかどうかが分かれるという点です。全部をAIに任せるか否かではなく、どの工程を任せるかで考えると判断しやすくなります。
AI動画は企業の実務でどこまで使えるか?
AI動画は、実在しないイメージ映像には強く、実在する自社の商品や人を正確に見せる用途には向きません。この一線が、現時点でもっとも実務的な判断基準です。
理由はシンプルで、生成AIは「それらしい映像」をつくることは得意でも、「実物と寸分違わぬ映像」を再現することは不得意だからです。自社商品の形状や色、ロゴの細部、店舗の実際の様子は、生成された映像では微妙に違ってしまいます。商品紹介でこれをやると、実物と印象が異なり、かえって信頼を損ねます。
一方で、次のような用途ではAIが十分に機能します。
- 抽象的なイメージ映像や背景素材
- サービスの仕組みや概念を説明するアニメーション
- ナレーション、字幕、多言語版の展開
- 社内向けの簡易的な説明動画
逆に、次の用途は撮影が前提になります。
- 自社商品の実物紹介
- 店舗・工場・現場の紹介
- 社員インタビュー、採用動画
- 「この会社で働く人の雰囲気」を伝える映像
AI動画と従来の制作はどう使い分ける?
用途ごとの向き・不向きを整理すると、次のようになります。
| 用途・目的 | AIを中心に作る | 撮影・編集を中心に作る |
|---|---|---|
| 抽象的なイメージ映像・背景素材 | ◎ | △ |
| サービスの仕組みの説明 | ○(アニメーション) | ○ |
| 自社商品の実物紹介 | × | ◎ |
| 店舗・工場・現場の紹介 | × | ◎ |
| 社員インタビュー・採用動画 | × | ◎ |
| ナレーション・字幕・多言語版 | ◎ | ○ |
| 社内向けの簡易説明動画 | ○ | ○ |
実務では、この2つは対立するものではありません。撮影した実写映像に、AIで生成した背景素材やナレーション、多言語字幕を組み合わせる併用が、もっとも現実的で費用対効果が高い進め方です。
なお、撮影を含む場合の費用がどう決まるかは、動画制作の見積もりが3倍違う本当の理由で内訳を整理しています。
AI動画を実務に取り入れる進め方は?
社内で試すときは、次の順番で進めると失敗が少なくなります。
- 目的と「実在性」の要否を切り分ける:その動画は実物を正確に見せる必要があるか。必要なら撮影が前提です。
- AIに任せる工程だけを決める:全部ではなく、ナレーションや字幕など、影響範囲の小さい工程から始めます。
- 短い尺で試作し、社内で評価する:本番用ではなく、15〜30秒程度の試作でトーンが自社に合うかを確認します。
- 権利と表記を確認する:使用するAIサービスの利用規約で、商用利用の可否と生成物の権利の扱いを必ず確認します。
- 問題なければ制作フローに組み込む:毎回ゼロから判断せずに済むよう、社内の判断基準として文書化します。
AI動画制作でよくある失敗は?
もっとも多い失敗は、実物と異なる映像を公開してしまい、見た人の誤認を招くことです。特に商品の外観や機能に関わる部分は、少しの違いでもクレームや信頼低下につながります。
そのほか、企業でよく起きるのは次のようなケースです。
- 権利・肖像の確認不足:生成物の商用利用が規約上どう扱われるかを確認しないまま公開してしまう
- 「安く早く」だけで判断する:作り直しが発生し、結果的に撮影するより高くつく
- トーンが自社ブランドと合わない:それらしいが自社らしくない映像になり、社内承認で差し戻しになる
- 確認フローがないまま公開する:誰が最終責任を持つか決めずに進め、公開後に問題が発覚する
AIを使う場合でも、「何を伝えるか」という企画と、公開前の確認体制は人が担う必要があります。ここを省略すると、速さの利点が作り直しで相殺されてしまいます。
まとめ
現時点でのAI動画制作は、「動画制作を置き換えるもの」ではなく「工程を効率化するもの」です。実在しないイメージ映像・ナレーション・字幕・多言語展開ではすでに実用段階にあり、自社の商品や人を正確に見せる映像は撮影が前提になります。まずは影響範囲の小さい工程から試し、実物を見せる部分は撮影と組み合わせるのが、現実的で失敗の少ない進め方です。
ムービルドは、実写とアニメーションの両方に対応しています。全国のクリエイターコミュニティ(1,000人以上)と連携しているため、撮影が必要な場合も撮影地の近くのメンバーが対応でき、窓口はディレクター1名に一本化されます。費用の最低料金は編集のみで10万円〜、撮影を含む場合は15万円〜、制作期間は最短2週間〜です。この金額は企画・構成をお客様側でご用意いただき、シンプルな構成で制作する場合のもので、クオリティにこだわる場合や企画から任せたい場合はご予算に余裕をみておくことをおすすめします。
どの工程をAIに任せ、どこを撮影すべきか迷う場合は、無料相談で目的をうかがったうえでご提案します。
